看護用語集

せん妄

せんもう

せん妄とは、急性かつ一過性に起こる意識障害のひとつであり、周囲に対する関心や注意力が低下し、さまざまな認知機能障害、幻覚、錯覚などの精神症状睡眠障害を伴う症候群である。幻覚不眠などを引き起こす過活動型、傾眠や無気力状態になる活動低下型、過活動型と活動低下型のどちらの症状も現れる混合型の3つに分けられる。
幻覚不眠などを引き起こす過活動型、傾眠や無気力状態になる活動低下型、過活動型と活動低下型のどちらの症状も現れる混合型の3つに分けられる。

せん妄は入院患者さんや、手術後の患者さん(術後せん妄)に見られる。特に、認知症、視覚・聴覚の障害、アルコール依存症うつ病などの患者さんや、高齢者せん妄を発症しやすい。これは認知機能や視覚・聴覚機能の低下といった準備因子があることに加えて、入院するきっかけとなった疾患やそれに対する薬剤の使用といった直接因子、普段とは異なる環境での生活などの誘発因子と、複合的なリスク因子が原因と考えられる。

せん妄認知症は似たような症状のため、区別する必要がある。せん妄は急性に発症し、適切な介入によって数日から数週間で症状が改善することが多い。一方で、認知症は数年の経過で徐々に記憶障害や注意障害といったせん妄に似たような症状が出現して持続する点が異なる。

●用語を使用した例文
緊急で入院した高齢の患者さんが、夜間にせん妄を発症した。

●用語に関連する国試過去問

Aさん(81歳、男性)は、妻(73歳)と2人暮らし。自宅でのADLは自立し、認知機能に障害はない。Aさんは食欲不振と腹部不快感、微熱を主訴に受診したところ、急性胆嚢炎と診断され、その日のうちに入院した。Aさんのバイタルサインは、体温37.3 ℃、呼吸数22/分、拍90/分、血圧136/84mmHg。入院後は絶飲食の指示があり、持続点滴注射と抗菌薬の投与が開始された。トイレ歩行の許可は出ている。入院後2日、妻がAさんについて「入院してからよく寝ています。時々ここが病院だとわからないようです。話しかけても気づかず、天井を眺めていることもあるし、しゃべり続けることもあります」と看護師に訴えた。Aさんのバイタルサインは、体温36.9 ℃、呼吸数20/分、拍88/分、血圧144/80mmHg。Aさんの状態で最も考えられるのはどれか。

 1.うつ病
 2.せん妄
 3.ナルコレプシー
 4.急性ストレス反応
 第109回看護師国家試験(2020年)
 
解答

2


●参考文献
日本老年医学会:1.高齢者せん妄の機序.(2024年5月15日閲覧) https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_51_5_417.pdf
日本老年医学会:2.認知症せん妄.(2024年5月15日閲覧) https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_51_5_422.pdf

監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:p

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