看護用語集

記憶障害

きおくしょうがい

記憶障害とは、何らかの要因で記憶の保持や想起が困難になる状態のことである。

記憶障害は大きく分けると、加齢による生理的な記憶障害と病的な記憶障害がある。生理的な記憶障害には加齢による物忘れが該当し、この場合は本人が忘れていることを自覚していたり、きっかけがあると思い出せたりする。

一方病的な記憶障害には、新しいスキルや情報の習得・記憶が困難になる短期記憶障害、昔のある出来事や事実情報の記憶が思い出せなくなる長期記憶障害、体験した出来事や行動を実施したかを想起できないエピソード記憶障害、なじみのある言葉やその意味を思い出せない意味障害などがある。

病的な記憶障害は、さまざまな原因によって引き起こされるが、主に脳の物理的な損傷や疾患によって生じる器質的原因と、脳の構造に明確な損傷はないが、心理的・精神的な要因から生じる機能的原因の2つに分けられる。

器質的原因として、頭部外傷や脳震盪、くも膜下出血による脳の圧迫、脳梗塞脳出血など脳の血流障害による血管性認知症など、脳の物理的な損傷が挙げられる。また、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患や、脳腫瘍や感染による炎症、ウェルニッケ脳症なども含まれる。

機能的原因としては、精神的ストレスや睡眠障害薬剤による影響がある。PTSDの患者さんは出来事に関連する記憶が突然よみがえるフラッシュバック現象や、反対にその出来事に関する記憶が部分的、または完全に失われることがある。睡眠不足の場合、短期記憶の機能が低下し新しい情報の保持が困難になる。薬剤ではその作用や副作用から、記憶力や注意力が低下する。

記憶障害評価方法には、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、ミニメンタルステート検査(MMSE)などがある。

記憶障害患者さんへの看護として、患者さんが混乱しないように配慮したコミュニケーションや、安全に治療や生活ができる援助が必要である。また記憶障害の原因はさまざまなため、原因や疾患、そして記憶障害の種類や程度に合わせた看護を提供することが重要となる。

●用語を使用した例文
95歳の認知症患者さんは、 記憶障害により 5分ごとに食事の心配をするため「1時間後に食事ができます。食べる時に声をかけます。」と貼り紙をした。

●参考文献
加藤伸司:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の理解と活用.(2024年10月24日閲覧)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcgp/4/0/4_47/_pdf/-char/ja
森悦朗,他:神経疾患患者における日本語版Mini-Mental State テストの有用性.神経心理学 1985;1:82–90.(2024年10月24日閲覧)http://www.neuropsychology.gr.jp/journal/archive/1985_01_02_01.pdf

監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:山﨑博貴

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