看護用語集

心拍出量減少

しんはくしゅつりょうげんしょう

心拍出量減少とは、心筋の収縮力の低下や循環血液量の不足などにより、全身に必要な血液を十分に送り出せない状態を指す。NANDA-Iの看護診断では「心臓の拍出する血液量が、体の代謝要求に対して不十分な状態1)」と定義されている。この状態は、心不全、急性心筋梗塞不整、循環血液量の減少、弁膜症、肺高血圧など、さまざまな病態によって生じる。

心拍出量減少には、前負荷、後負荷、心筋の収縮力、心拍数の変化が関係している。前負荷とは、心臓に戻る血液量によって心室にかかる負荷であり、脱水や出血によって血液量が減少すると前負荷が低下し、心室へ流入する血液量が減るため心拍出量が低下する。一方で、前負荷が過剰になると心筋の拡張が過度になり、収縮効率が低下して心拍出量の低下を招く。

後負荷は、心臓が血液を送り出す際にかかる負荷であり、高血圧などで増大すると心筋への負担が増し、拍出が妨げられることで心拍出量が減少する。また、心筋の収縮力の低下や心拍数の増減(頻・徐)によっても、心拍出量に影響を及ぼす。

心拍出量が減少すると、臓器への血流が不足する状態(低灌流)となり、臓器機能の低下を招く。さらに、生命維持機能が損なわれる恐れがある。

看護師は心拍数、血圧、SpO₂、呼吸状態、尿量、末梢温、皮膚色、心電図波形の変化、自覚症状などを総合的に観察し、心拍出量減少による低灌流の徴候を早期に捉えることが重要である。

体液管理では、飲水量、補液量、排泄量、体重変化を確認し、前負荷・後負荷の変化を評価する。薬物療法が行われている場合は、利尿薬、血管拡張薬、強心薬などの効果と副作用評価し、過度な血圧の低下や腎機能の悪化に注意する。また、患者さんには、体重増加、浮腫、息切れ、倦怠感などの症状を理解してもらい、悪化の早期発見に繋げることが求められる。

●用語を使用した例文
看護計画の目標は、心拍出量減少による臓器低灌流を防ぐことであり、血圧尿量・末梢温を重点的に観察する。

●引用文献
1)T.ヘザーハードマン,編:NANDA-I 看護診断 定義と分類 第12版.医学書院,2021,p.276.

監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:山﨑博貴

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