看護用語集

下痢

げり

下痢とは通常の便より水分量が多く、液状に近い便を頻繁に排出する状態のことである。WHOのファクトシートでは、下痢症は「1日に3回以上(一般に普通とされるよりも多い回数)の軟便または水様便の排泄」1)と定義されている。

下痢の種類は原因によって主に以下の4つに分けられる。
表1 下痢の種類
種類原因
浸透圧性下痢 腸で水分吸収がされにくい高浸透圧性の食事、飲み物、薬剤によりで、腸管で水分が吸収されず腸管内に移動して起こる
分泌性下痢 感染ホルモンの影響などで、腸液などの分泌物が増加している
滲出性下痢 腸の炎症により、滲出液が出ることや水分吸収能が低下している
蠕動運動性下痢
腸管運動性下痢
疾患や薬剤の影響により、腸蠕動運動が亢進している

上記の種類のほかに、身体の外に原因がある「外因性下痢」と、原因が身体の内側にある「内因性下痢」でも分類される。

また、下痢の持続期間によって「急性下痢」と「慢性下痢」に分けられることもある。急性下痢を引き起こす原因には、ウイルス、細菌、寄生虫などの感染、抗生物質、下剤、抗がん剤などの薬物によるもの、脂肪分の高い食事やアルコール、カフェイン摂取による消化不良などがある。一方、慢性下痢の原因は、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、吸収不良症候群などの消化管障害などが挙げられる。

下痢は重度の場合、脱水症状や低カリウム血症など電解質異常による筋肉のけいれんや不整を引き起こす場合がある。

また、おむつを着用していると高温多湿な環境により皮膚のバリア機能が低下していることがあり、便の長時間の接触や頻繁に皮膚を拭いたり洗浄したりすることによる刺激によって、皮膚のただれや出血を引き起こす可能性もある。

下痢の看護では、患者さんの水分摂取量と排泄量を記録し、口渇感、皮膚の乾燥、拍の上昇、尿量減少といった脱水症状の徴候や、意識障害、手足のつりや脱力、血圧低下、悪心・嘔吐などの電解質異常の徴候が見られないかアセスメントをする。また、皮膚の刺激を防ぐため、お湯などを用いて会陰部や肛門周囲の清潔を維持することが重要となる。

また、下痢により栄養状態が悪化する可能性があるため、患者さんが摂取しやすく、好みに合った食べ物や飲み物を提供する。さらに、食物繊維が多い食品や牛乳、カフェイン、アルコールの摂取は控えることや、下痢の原因が感染症の場合は、手洗いや手指消毒などの感染対策を指導する。

●用語を使用した例文
下痢が続く患者さんの便を検査するとノロウイルスが検出されたため、トイレ周囲やドアノブを5%濃度の次亜塩素酸ナトリウムで消毒した。

●用語に関連する国試過去問

下痢によって生じやすい電解質異常はどれか。
 1. 低カリウム血症
 2. 高カルシウム血症
 3. 高ナトリウム血症
 4. 低マグネシウム血症
  第109回看護師国家試験(2020年)
 
解答

1



●引用文献

1)厚生労働省検疫所:下痢症について (ファクトシート).Forth(2024年10月01日閲覧) https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2017/06011343.html#

監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:山﨑博貴

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