看護用語集

腹圧性尿失禁

ふくあつせいにょうしっきん

腹圧性尿失禁とは、咳やくしゃみ、運動などで腹圧が上昇した際、尿道が閉じず尿が漏れてしまうことである。

腹圧性尿失禁は、尿道括約筋を含む骨盤底筋群の緩みや衰え、尿道閉鎖機能の低下によって起こり、妊娠・出産、加齢、肥満などが原因となる。

例えば、出産時に陣痛が長引いたり、難産だったりすると、骨盤底筋群に大きなダメージが加わる。また女性ホルモンであるエストロゲンは、骨盤底筋群の維持にもかかわっており、閉経後にエストロゲンの分泌が減少すると、骨盤底筋群の萎縮などが起こりやすくなる。そのほか、加齢による筋力低下、肥満による腹部への圧迫なども骨盤底筋群への負担が大きくなり、機能が低下しやすくなる。

出産や加齢以外の原因として、慢性的な咳や便秘、激しい運動、遺伝なども考えられる。男性の場合は、前立腺がんや前立腺肥大症の手術後に起こる可能性がある。

腹圧性尿失禁の診断には、問診や診察を行い尿漏れの状況を詳しく聞き取ったうえで、尿失禁の重症度を測るパッドテストという検査方法が用いられる。

腹圧性尿失禁は生活習慣の改善によって症状を緩和できるため、看護師は水分のコントロール、カフェイン・アルコールを制限するなどの食事指導、便秘の解消につながるケアなど行う。またエクササイズによる骨盤底筋群の訓練を実施するのも効果的である。

薬物療法で用いられる薬剤には、外尿道括約筋の収縮力を上げ、尿道を閉じる作用があるβ2作動薬などがある。また女性の場合は、膀胱に腹圧がかかったとき尿失禁をきたさないよう特殊なテープで尿道を支える中部尿道スリング手術(TVT)を行うこともある。

●用語を使用した例文
腹圧性尿失禁は女性の尿失禁の中で最も多い尿失禁である。

●用語に関連する国試過去問

腹圧性尿失禁ケアとして適切なのはどれか。2つ選べ。

 1.下腹部を保温する。
 2.骨盤底筋群訓練を促す。
 3.定期的な水分摂取を促す。
 4.恥骨上部の圧迫を指導する。
 5.尿意を感じたら早めにトイレへ行くことを促す。
  第106回看護師国家試験(2014年)
 
解答

2、5



●参考文献
・吉田 修,監:日常診断のための泌尿器科診断学,インターメディカ,2002,:p136-149
・三井貴彦:下部尿路症状の原因疾患に対する治療戦略!治療薬の選び方と使い方 尿失禁.薬局、2021;72(7):p2620-4.
・日本泌尿器科学会:尿が漏れる・尿失禁がある.(2024年11月22日閲覧)https://www.urol.or.jp/public/symptom/04.html

監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:古田聡美

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