栄養摂取バランス異常：必要量以下

栄養摂取バランス異常：必要量以下とは、身体が必要とする栄養量に対して、摂取量が不足している状態である。NANDA-Iの看護診断では「栄養摂取が代謝ニーズを満たすには不十分な状態^1）」と定義されている。

これには、食欲不振、嚥下障害、消化吸収機能の低下、摂食動作困難などの身体的要因、精神疾患や食物への嫌悪感・関心不足などの心理的要因、経済的制約や体型維持が必要な職業などの社会的要因といったさまざまな要素が関与している。例えば、腹痛や口腔内の疼痛によって食欲が減退している場合も、栄養摂取量が不足する状態になり得る。

この状態では、体重減少、筋力低下、皮膚や粘膜の乾燥、浮腫、褥瘡発生リスクの上昇、集中力の低下、倦怠感、低血糖症状などが現れる。さらに低栄養状態が続くと、創傷治癒の遅延や免疫力低下を招き、合併症へと進展する恐れがある。

看護師は、患者さんの栄養状態や食事摂取状況を正確に評価し、原因の解決や代替手段を用いた支援を行うことが重要である。さらに、必要に応じて他職種と連携しながらケアを提供する。例えば、早期に満腹になり、通常の食事で必要栄養量を摂取できない患者さんには、管理栄養士と共同して栄養補助食品の導入を検討する。また、嚥下機能に問題がある患者さんには、言語聴覚士と連携し、安全に嚥下ができる食事形態や体位、介助方法を選択する。

●用語を使用した例文
栄養摂取バランス異常：必要量以下の看護計画の短期目標を「1週間以内に1日の必要エネルギー量の60％以上を経口で摂取できること」と設定した。

●引用文献
1）T.ヘザーハードマン，編：NANDA-I 看護診断 定義と分類 第12版．医学書院，2021，p.181.

監修：林 洋（東京有明医療大学 学長）
執筆：山﨑博貴