看護用語集

酸塩基平衡

さんえんきへいこう

酸塩基平衡とは、主に血液のpHを一定の正常範囲(7.35~7.45)に保つことで、体内の酸塩基バランスを維持する仕組みを指す。

人間の体内では、代謝や呼吸の過程で常に酸性・アルカリ性の物質が産生され、肺や腎臓、緩衝系の調節機能によって適切にコントロールされることで、血液のpHが正常範囲に保たれる。このバランスが崩れると、血液pHが低下した状態であるアシドーシスや、pHが上昇した状態のアルカローシスといった異常が生じ、細胞や臓器の機能に影響を及ぼす。

酸塩基平衡は以下のような仕組みによって調整される。
表1 酸塩基平衡を維持する主な仕組み
機構主な役割・仕組み
呼吸数や深さを変化させることで、二酸化炭素(CO₂)の排出量を調節し、体内の酸性度(H⁺濃度)を調整している
腎臓 酸性物質(H⁺)を排出させ、重炭酸イオン(HCO₃⁻)を再吸収することで、体内のpHバランスを維持している
緩衝系 血液中では重炭酸イオン(HCO₃⁻)が重要な役割を果たしており、肺や腎臓の調節と密接に連携し、pHの変化を最小限に抑える

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息などの呼吸器疾患で肺の機能が低下すると、CO₂の排出が不十分となり、体内にCO₂が蓄積して呼吸アシドーシスを引き起こす。また、呼吸数が過剰に上昇することで過呼吸となり、呼吸性アルカローシスを起こすこともある。

一方、腎機能の低下や下痢などによりH⁺の排出やHCO₃⁻の再吸収が難しくなると、代謝性アシドーシスが生じやすくなる。また、嘔吐などにより酸を失うことで、塩基過剰となり代謝性アルカローシスが起こることもある。

看護師として、患者さんの呼吸状態や尿量などの観察や、血液ガス分析の結果を通じて、酸塩基平衡の異常を早期に発見することが重要である。また、酸塩基平衡の仕組みを理解することで、個別性のある看護の実践に繋がる。医師の指示に基づいて適切なケアを提供しながら、患者さんに対して必要な説明や支援を行うことが求められる。

●用語を使用した例文
呼吸不全が生じている患者さんの酸塩基平衡を確認する

●用語に関連する国試過去問
血液のpH調節に関わっているのはどれか。2つ選べ。
1. 胃
2. 肺
3. 心 臓
4. 腎 臓
5. 膵 臓
第110回看護師国家試験(2021年)
解答

2、4



監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:p

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