看護用語集

乳児運動発達遅延

にゅうじうんどうはったつちえん

乳児運動発達遅延とは、骨や筋肉の強化によって可能となる寝返りやおすわりなどの基本的な運動や周囲の物に触れたりする運動が、月齢に見合った発達段階の時期になっても確認できない状態を指す。例えば、寝返りは生後5~6カ月、おすわりは7~8カ月が発達時期の目安である。

NANDA-Iの看護診断では「骨や筋肉の一般的な強化や、周囲の物を動かしたり周囲の物に触れたりする能力に関連した発達のマイルストーン(目安)を、常に達成できない状態1)」と定義されている。なお、発達のマイルストーンの達成が困難になる恐れがある状態は、乳児運動発達遅延リスク状態という看護診断が適用される。

乳児運動発達遅延には、骨・筋肉系の発達遅延に加え、乳児自身の感覚処理の困難さや自発性の乏しさといった内的要因と、家庭環境や保護者のかかわり方といった外的要因も関与する。

例えば、母親の産後の抑うつや育児に対する不安がある場合、乳児へのかかわりが限定的になる傾向がある。また、発達を支援する玩具や遊ぶ機会の不足、乳児に手を伸ばさせたり身体を動かせたりする働きかけが不十分だと運動の機会が減りやすい。こうした背景が影響し、発達の遅れにつながる可能性がある。ほかにも、早産や産前の母親の精神状態、栄養状態、薬の影響など、出産前後の状況も乳児の発達に関与する。

看護者は、乳児の発達の段階だけでなく、育児環境や保護者の心理状態を含めた多面的な視点でアセスメントを行う必要がある。また、乳児が日常的に身体を動かせるような環境を整え、腹ばい遊びや玩具を活用した活動の促し方を保護者に共有しながら、育児に対する自信や乳児の自発性を引き出すための支援が重要である。

●用語を使用した例文
乳児運動発達遅延がみられるため、看護目標は「1日3回以上腹ばいの姿勢を取る」にした。

●引用・参考文献
1)T.ヘザーハードマン,編:NANDA-I 看護診断 定義と分類 第12版.医学書院,2021,p.574.
厚生労働省:子ども家庭総合評価票 記⼊のめやすと⼀覧表.(2025年6月24日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/content/000348513.pdf



監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:山﨑博貴

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