CO2ナルコーシス

CO₂ナルコーシスとは、呼吸の自動調整能が正常に働かなくなり、動脈血液内の二酸化炭素濃度が高まることによって、意識障害などの中枢神経症状を呈する病態のこと。過鎮静、中枢神経性疾患、神経変性疾患、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息などが原因で起こる。

呼吸は、動脈血液内の酸素濃度を末梢化学受容体（頸動脈小体、大動脈小体）が感知し、二酸化炭素濃度を中枢化学受容体（延髄腹側）が感知して、その情報が呼吸中枢（延髄・橋）へ伝達されることで自動調整能が働く。例えば、動脈血液内の酸素の低下、二酸化炭素の上昇があれば呼吸量を増やし、逆の場合は呼吸量を抑えることで一定の状態を保っている。

CO₂ナルコーシスの場合、何らかの原因でその自動調節能が働かず、動脈血液内の二酸化炭素濃度の高い状態が続いて体内の酸塩基平衡バランスが崩れ、重度の呼吸性アシドーシスになり、意識障害が生じる。症状が進行すると、意識障害と呼吸中枢の感受性の低下によって自発呼吸が弱まるとともに、意識が消失し、舌根沈下や窒息、呼吸停止につながり、死に至ることもある。

監修：林 洋（東京有明医療大学 学長）
執筆：川村未樹（有明医療大学看護学部看護学科　助教）