看護用語集

自傷行為

じしょうこうい

自傷行為とは自殺以外の目的で自らを意図的に傷つける行動のことである。自傷行為には、手首自傷症候群(リストカット)、打撲、自ら髪を引き抜くなどの行動が含まれる。

自傷による痛みによって現実感を取り戻すことで、処理し切れない感情を発散させ、ストレスや不安などの精神的な苦痛を和らげる目的もある。また、罪悪感を緩和するために自己懲罰的な自傷行為に及ぶ場合もある。

自傷行為は誰にも知られずに行われていることが多く、周囲が自傷行為に気づいた段階では、自傷が繰り返され発展した段階であることが多い。

全国から対象者を無作為に抽出した調査によると、回答者のうち全体の7.1%(男の3.9%、女の9.5%)が少なくとも1回以上の自傷経験があり、年代別では16–29歳における自傷経験率が9.9%と最も高い結果1)であった。またほかの研究では「10代で自傷行為を行った者の10年後の自殺既遂率は、行わない者と比較して数百倍に高まる」2)ことが明らかとなっている。

自傷行為がある患者さんへの看護として、本人のペースで話ができる環境をつくり、感情に寄り添うことが大切である。患者さんは自傷の原因を理解できていなかったり、問題行動として捉えていなかったりする可能性がある。看護師自傷行為に何を求めているのかを強く問い詰めることをせず、患者さんが安心して原因の解決にむけて行動できるよう、周囲にも理解や援助を求める必要がある。

また看護師として患者さんの感情に寄り添うことも大切だが、客観的で適切な治療や看護を提供するためにも、過度な共感で看護者自身が精神的に不安定にならないよう注意が必要である。

●用語を使用した例文
彼女はストレスに対処できず、自傷行為に走ってしまうことが多かった。

●用語に関連する国試過去問

成人期早期に、見捨てられることに対する激しい不安、物質乱用や過食などの衝動性、反復する自傷行為、慢性的な空虚感、不適切で激しい怒りがみられ、社会的、職業的に不適応を生じるのはどれか。
 1. 回避性人格〈パーソナリティ〉障害
 2. 境界性人格〈パーソナリティ〉障害
 3. 妄想性人格〈パーソナリティ〉障害
 4. 反社会性人格〈パーソナリティ〉障害
  第109回看護師国家試験(2020年)
 
解答

2



Aさん(22歳、女性、会社員)は、昼食後、自室に大量のお菓子とお酒を持ち込み、食べて飲んでいたところを母親に注意をされたことに腹を立て、母親の目の前でリストカットを始めた。慌てた母親は、父親とともにAさんを連れて救急外来に来院した。医師が傷の処置をしようとすると「死んでやる。触るな」と大声で騒ぎ暴れ始めたため、精神科病棟に緊急入院となった。
入院後3週、Aさんの精神状態は落ち着き、職場に早く戻りたいと意欲があったため、退院に向けての準備をすることになった。自傷行為は、入院前の1回のみだった。Aさんは「また過食をしないか心配だ」と看護師に訴えた。そのため主治医はAさんと話し合い認知行動療法が開始となった。Aさんの退院に向けて、医師、看護師のチームと連携するメンバーで最も適切なのはどれか。
 1. 栄養
 2. 薬剤
 3. 臨床心理士
 4. ゲートキーパー
 5. 精神保健福祉相談員
  第109回看護師国家試験(2020年)
 
解答

3



●引用文献

1) 阿江竜介:わが国における自傷行為の実態 2010年度全国調査データの解析. 日本公衛誌 2012年;第59巻(第9号)
2)石田実知子:高校生の自傷行為の経験率における性差の検討.厚生の指標 2019年;第66巻(第13号)

監修:林 洋(東京有明医療大学 学長)
執筆:山﨑博貴

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